新型コロナウイルス感染症の
後遺症・フォローアップ外来
のご案内
新型コロナウイルス感染症の
後遺症(Long COVID)について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後に、急性期の症状が改善して退院・療養を終えても、持続的な症状を有する方が存在することが世界各国から多数報告されています。
● 日本で確認されている主な症状
日本からはCOVID-19患者さまをたくさん受け入れている東京都の国立国際医療センターのチームが、COVID-19で入院した患者さまの退院後の症状について、電話やアンケートを実施し、63名から回答を得ています。持続するCOVID-19の症状としては、次のような症状が挙げられています(注1)。
症状 | 60日後の割合 | 120日後の割合 |
---|---|---|
嗅覚障害 | 19.4% | 9.7% |
呼吸苦 | 17.5% | 11.1% |
だるさ | 15.9% | 9.5% |
咳 | 7.9% | 6.3% |
味覚障害 | 4.8% | 1.7% |
海外の研究者からの報告では、下記の症状も報告されています(注2)。
- ● 関節痛
- ● 筋肉痛
- ● 胸痛
- ● 認知障害
- ● うつ病
- ● 不安
- ● 睡眠障害
- ● 頭痛
- ● 発熱
- ● 動悸
- ● 脱毛 など
● Long COVIDとは?
今のところ、COVID-19の後遺症については解明段階であり、明確な定義やその治療方法などはわかっていない部分が多いのですが、現在も日々多くの感染者が発生しており後遺症で苦しむ方が増えてしまうことが問題となっています。
イギリスでは、国立衛生研究所(NIHR)がこれらの後遺症とされる症状をLong COVIDと呼び、次の4つのカテゴリーで研究が進められています(注3)。
1. 永続的な臓器障害(肺、心臓など)
2. 集中治療後症候群(重症で集中治療室等で治療した後の後遺症)
3. ウイルス後疲労症候群
4. 長期化するCOVID19の症状
症状を上記のいずれか単一のカテゴリーに分類することは難しいのですが、上記のような病態の複合的な病態が後遺症の症状を構成していると考えられています。
● ウイルス後疲労症候群について
ウイルス後疲労症候群は、米国でコロナ対策の指揮を取る米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が、2020年7月にCOVID19患者さまの長期化する疲労が、筋痛性能脊髄炎/慢性疲労症候群(以下、ME/CFS)に似ていることについて言及し(注4)病態として注目されています。
ウイルス感染後にME/CFSが発生することは、他のウイルス感染症でも指摘されています(注5)。ME/CSFでは、よく眠っても疲れが取れず活動によって蓄積することがある著しい疲労を特徴としています。仕事や生活に支障をきたす場合もあり、症状が長期化する場合もあります。
また、ME/CSFの場合には、疾患の認知度も低く周囲から理解を得られずつらい思いを感じている方も多くいらっしゃいます。ME/CSFの診断基準はまだ開発途上ではありますが、世界でいくつかの診断基準が提唱されています(注6)。鑑別診断となる疾患の除外診断をしながら、ME/CFSの診断基準を満たしていくかを精査していきます。
一般的にはME/CS Fを確定する検査というのはなく、除外診断として検査を実施し検査では明らかな異常がないことを確認していきます。治療については確立したものがないため、症状緩和として様々な治療が試されていますが、確定的な科学的な根拠は得られていません。患者さまの症状を伺って治療を行っていきます。
● 参考文献
注1: Miyazato Y, Morioka S, Tsuzuki S, Akashi M, Osanai Y, Tanaka K, Terada M, Suzuki M, Kutsuna S, Saito S, Hayakawa K, Ohmagari N. Prolonged and Late-Onset Symptoms of Coronavirus Disease 2019. Open Forum Infect Dis. 2020 Oct 21;7(11):ofaa507. doi: 10.1093/ofid/ofaa507. PMID: 33230486; PMCID: PMC7665672.
注2: 米国CDC(米国疾病予防管理センター)ホームページより
注3: https://evidence.nihr.ac.uk/themedreview/living-with-covid19/より
注5: Jenkins R. Post-viral fatigue syndrome. Epidemiology: lessons from the past. Br Med Bull. 1991 Oct;47(4):952-65. doi: 10.1093/oxfordjournals.bmb.a072523. PMID: 1794093.
注6: 日本医療研究開発機構(AMED)障害者対策総合研究開発事業 神経・筋疾患分野「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班 ホームページより