当院病院長 公平 誠 医師の連載記事「プライマリーケア医のがん診かた」が臨床雑誌「内科」11月号に掲載されました。
今回は、がんと糖尿病について2回に分けた連載の1回目になります。
当院では、がんと糖尿病の関係性に着目して、がんと糖尿病に関して専門医同士が密な連携をとって診療できるようにセンター化した診療を実施しています。
当院の「がんと糖尿病センター」については以下をご参照ください。
https://kodaira.life/cancer_and_diabetes-center/
1回目の記事では、糖尿病患者さんからみたがんとの関係性について解説しています。
1. 糖尿病患者さんの死因の1位は"がん"
これまで、糖尿病といえば心臓病や脳卒中が問題になると思われてきましたが、最近の統計では"がん"が糖尿病患者さんの死因の1位になってきています[1]。糖尿病や糖尿病合併症の管理の向上により、がん以外の病気がよくなってきている可能性もあります。いずれにせよ、糖尿病患者さんにおいて"がん"の対策を行うということは日常診療において重要な点になっていると言えます。
2. 糖尿病だとがんが増えるのか?
糖尿病患者さんの場合がんの発生リスクが高いことが知られています。表1に示すように、がん発生の相対リスクが、胃がん・大腸がん・肝臓がん・膵臓がん・乳がん・子宮内膜がん・膀胱がんなどで高まることが示されています。
表1
3. がんを防ぐのにどうすればよいか?
がんを防ぐためには、
・がんを予防する
・がんを早期発見する
という方法があります。
残念ながら、糖尿病患者さんでがんを確実に予防する方法というのは確立されていませんが、がんと糖尿病に関連するリスク因子をコントロールしていくことが現実的な方法と考えられます。
「糖尿病と癌に関する日本糖尿病学会と日本癌学会による国民一般(患者を含む)への提言」[2]食事療法、運動療法、禁煙、節酒は糖尿病の人にとっても癌の予防につながる可能性があり行うことが勧められるとされています。
がんの早期発見については、前述の提言のなかに
糖尿病の人は性別・年齢に応じて適切に,科学的に根拠のある癌検診を受診することが推奨されます。糖尿病で肝炎ウィルスが陽性の場合には,医療機関を受診して肝臓癌のスクリーニングを受けることが推奨されます」とされています。
日々の生活や診療のなかでは、糖尿病や高血圧など数字ではっきりわかる病態に目がいきがちですが、今後発生する可能性のある"がん"についても気にしておき生活習慣への気遣いやがん検診の受診など今からできる対策を行っておくことはとても大切だと言えます。
現在、特定健診やがん検診(当院では肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん)および肝炎の検査を行っています。
特定健診は10月末日までですので、まだ受診されていない方はお早めに受診をお願いします。
がん検診は2月まで実施していますので、ご都合のよいときに受診可能です。
特定健診、がん検診については以下のホームページに情報を掲載しています。
https://kodaira.life/healthcheck/healthcheck.php
参考文献
1. 中村二郎ら、―糖尿病の死因に関する委員会報告― アンケート調査による日本人糖尿病の死因 ―2001~2010 年の 10 年間,45,708 名での検討、糖尿病 59(9):667〜684,2016
2. 春日雅人ら、糖尿病と癌に関する委員会報告、糖尿病 56(6):374〜390,2013